「エッグフォワード 株式会社」Official HP
https://eggforward.co.jp/
「GOLDEN EGG Ventures」 HP
https://goldenegg-ventures.com/
「渋谷SAUNAS(サウナス)」Official HP
https://saunas-saunas.com/
スタートアップの街・渋谷へ、 世界初のサウナ×ピッチイベントに見た 起業と共創のエコシステム
2023年6月、エッグフォワード株式会社は渋谷圏のスタートアップコミュニティ創造・強化を目的に、世界初のサウナ×ピッチイベントを「渋谷SAUNAS(サウナス)」にて開催。企画を行ったエッグフォワード株式会社 代表取締役社長・徳谷智史氏にサウナと起業家によるプレゼンテーションの親和性、渋谷のスタートアップ共創の未来について話を伺った。
9つのサウナでととのう、コミュニケーションの起点「渋谷SAUNAS」
漫画、ドラマ、メディアを横断してもはやメインカルチャーとして多くの人々に親しまれるようになった“サウナ”。聖地と呼ばれ旅の目的とされるようなローカルなサウナから、ビジネスマンが日々の疲れを癒すため足繁く通う洗練された都心のサウナまで、その多様性と生態系は全国で奥行きを増し続けている。
そんな近年のサウナブームの集大成とも言える、 2022年12月に渋谷区桜丘町にオープンしたサウナ施設が「渋谷SAUNAS(サウナス)」だ。
サウナ愛好家にとってのバイブル『サ道』の原作者であり、サウナ・スパ協会公認の日本サウナ大使であるタナカカツキ氏が総合プロデュースを手掛けたこの施設は、趣向を凝らした8種類9つのサウナ室と2種類4つの水風呂を男女日替わりで提供。
視覚的なノイズを最小限に抑えた照度設計や、可能な限りミニマルに表現された館内の掲示サインなど、訪れた全ての人々が「ととのう」体験を得られるよう館内全体の細部に至るまでデザイン的な配慮がなされている施設だ。
渋谷SAUNASは、渋谷駅から徒歩4分、桜丘の坂を登った場所に位置する3階建ての新築サウナ専門ビルとして2022年12月にオープン。渋谷エリアの企業同士の交流、また桜丘エリアにおけるスタートアップ会社を中心としたコンソーシアムメンバーの福利厚生施設といった、スタートアップ支援の一環として東急不動産が開発。
そんな令和の都市型サウナとして注目を集める「渋谷SAUNAS」を舞台として、2023年6月に行われたイベントが「EggFORWARD 渋谷スタートアップサウナPitch100」。世界初と銘打たれたこのサウナ×ピッチイベントは、渋谷区も後援の上、広域渋谷圏を中心に不動産・入居者ネットワークを持つ東急不動産と、大手企業からスタートアップまでの経営・組織変革のコンサルティングや、VC出資によるスタートアップ支援などを幅広く手がけるエッグフォワード株式会社が主催した。
数多くのピッチ希望者の中から事前審査を通過したスタートアップ10社の代表が、「渋谷SAUNAS」に集まったスタートアップ経営層、VC、投資家など約100名に対してサウナ内で自社事業のピッチを披露。熱の入った文字通り“身一つ”のプレゼンテーションが1社60秒程度で行われ、イベントの最後は投票で選ばれた3社による決勝ピッチが屋外スペースにて実施された。
決勝ピッチは小雨の降る屋外開放スペースにて実施。屋内サウナで行われた各回の予選ピッチは安全面に配慮して温度調節と換気、オーディエンスの入れ替えを挟みながら行われた。
サウナ、水風呂、外気浴で身体を整え、リフレッシュした脳でピッチによる刺激的な事業アイデアをインプットするという、世界的に見てもおそらく前例のないこのイベント。参加者は2Fと3Fのそれぞれテーマの異なるサウナルームを行き来して、リラックスと集中を往復するようなこの独特なローテーションを楽しんでいるようだった。
サウナ×スタートアップピッチという、この異色のイベントはどのような背景で生まれたのか。本イベントを主催したエッグフォワード株式会社 代表取締役社長・徳谷智史氏にその想いを聞いた。
スタートアップが連鎖するための「開かれたエコシステム」とは?
─VC投資・コンサルティング・ネットワーク提供などを通じて幅広いスタートアップ支援を行っているエッグフォワードですが、代表の徳谷さんの目指してるビジョンや理想としている未来について、まずは教えてもらえますか?
徳谷:エッグフォワードがミッションとして掲げているのは、「いまだない価値(Egg)を創り出し、人が本来持つ可能性(Egg)を実現し合う世界を創る。」です。「いまだない価値」というのは人や組織、もっというと社会や世界のターニングポイントのこと。人生には価値ある起点が誰しも必ずあり、それが人の本来持っている可能性を広げ、組織を変え、相互に連鎖しながら世の中を前進させていく。そんな社会構造を目指しています。
もう少し解像度あげると、人がありたい姿に向かって自己実現に向かい、周りの人にも良い影響を与えていくようなサイクルをイメージしています。社会を良くしようとする志の高いスタートアップが生まれ、発展して、社会全体が前向きに変わっていく。そんな連鎖が広がっていくような世の中を、私たちは目指そうとしています。
─独立したスタートアップが「相互に連鎖する」とはどういった形なのでしょうか?
徳谷:「スタートアップ共創の開かれたエコシステム」という表現を私たちはしています。エッグフォワードではスタートアップ各社へのご出資や経営支援も数多く手掛けており、多くのユニコーンの支援もしてきました。ただ、私たちの力だけでは社会が変わるには至らない。スタートアップ共創というのは、”共に創る”という字の如く、我々エッグフォワードが創るというだけではなく、様々なステークホルダーと協業しながら新しいスタートアップの誕生と発展を促していく構造を創るということ。我々が起点となりながら、行政が絡み、東急不動産さんのようなデベロッパーが絡み、VCの皆さんも絡んでいきながら循環の輪を広げていく。その先で、社会に前向きなインパクトを与えていくような社会構造をつくっていきたいということですね。
─そういう、スタートアップを後押しするような社会構造やムードが日本や東京はまだまだ希薄ということでしょうか?
徳谷:全く足りないと思っています。私自身も起業家でもあるわけですが、新しい価値を生み出したり、社会を前向きに変えていこうと志す人自体がまだまだ少ないし、志してチャレンジしたとしても実現に至らないまま淘汰されてしまうスタートアップがほとんどです。志高いスタートアップがいつの間にか消えていく様には悔しさしかありません。「チャレンジした者損」かのようになってしまう構造は社会の進歩にとってもデメリットで、お互いが垣根を超えて支援し合いながら拡大していける世界を共感頂ける方々と一緒につくっていきたいです。
─エッグフォワードはコミュニティやイベントの運営も積極的に行っていますが、スタートアップ同士の交流を横串で繋げていくような動きも重要なのでしょうか?
徳谷:そうですね。起業家同士が刺激や影響を与えあったり、失敗の知見を共有し合えたり、若い学生の起業のきっかけになったり、事業構想はあるが資金が不足する起業家と資金拠出もできる起業家との接点となったり。そういった広がりのあるターニングポイントをつくっていく役割を担っていきたいですね。
サウナだから実現した“鎧を脱ぎ捨てる”本音のプレゼン
今回が初開催となった、渋谷SAUNASを会場とした「EggFORWARD 渋谷スタートアップサウナPitch100」。類を見ないユニークなピッチイベントになりましたが、まずは開催に至った背景について教えてください。
徳谷:まず、この渋谷SAUNASも含めた渋谷エリア一帯の開発をされてる東急不動産さんと私たちエッグフォワードの想いや志が近いということ。渋谷をスタートアップの聖地として共創の連鎖をつくっていきたいという思想面の共感があります。
それを実現するためにいろんなアプローチがある中で、他の街や企業と同じことをやっていては「いまだない」価値や起点にはならないと考えました。加えて、私がサウナが好きなのはもちろんですが、渋谷SAUNASがとても素晴らしい施設で感動したという点ですね。
また、私の印象ですが、スタートアップ経営者はサウナ好きな方が多い。サウナに入ったりととのったりする前後の、しがらみがない時間で相談や悩みをふっと共有することが日常的にあって。スタートアップ×本音で生まれるきっかけ・繋がりがサウナの空間で起こり得るんじゃないか、そんな構想から東急不動産さんに多大なご協力をいただいて、実現したという感じですね。
─まさに今回のイベントは、参加者のスタートアップ代表者の方々が資料ひとつ手元になく体と言葉のみのフリースタイルでプレゼンをされていました。徳谷さんは仕事柄、これまで膨大な数の事業プレゼンを受けてきたと思いますが、サウナならではの面白さは感じましたか?
徳谷:ポジショントークではない、熱量の高い本音をぶつけ合うコミュニケーションは大事だなと改めて感じましたね。起業家、VCの方など役割の異なるスタートアップ関係者が集まる中で、駆け引きや見え方をかなぐり捨てているからこそ、理解も進むし応援したいと思える瞬間があったのではないかと思います。
定員を大きく超える数多くの参加希望を頂いたことも印象的でしたし、イベント終了後、ピッチを体験した参加者の方からも前向きな声を非常に多くいただきました。登壇者の方からも資料に頼らず自分の言葉の力だけでいかに事業の魅力を伝えられるかということに改めて向き合うきっかけになったという言葉をいただきました。共創のための「共に創る」前提は、お互いの本気の理解が必要なので、そのきっかけを提示する貴重な場になったのではないでしょうか。実際にこの機会から、大企業との事業提携や出資等の具体的連携も早速進んでいます。
─徳谷さんもサウナ愛好家の一人とのことですが、この「渋谷SAUNAS」だからこそ成功した部分はありますか?
徳谷:サウナの中がひな壇になっていて、ピッチする起業家をぐるりと囲むように見る構図は面白かったですね。ピッチの登壇者はもちろん、聞く方もPCやスマホを持たずに発言に集中できるという状況も新鮮で良かったと思います。会議室でのプレゼンだと聞き手はみんなPCやパラパラ流れるパワーポイント資料を眺めていることが多く、話を聞いてるのか聞いてないのかもわからない、眠そうにしてる人もいる、なんてこともよくあるので…。
あとなんといっても、渋谷SAUNASは本当にいろんなサウナが用意されていて素晴らしいですね。イベント中も、皆スタートアップ関係者でありながら、サウナに参加者が入れ替わりで入る度に隣同士で「はじめまして、こんにちは」みたいな、偶発的なコミュニケーションが生まれていて。水風呂行って休憩して、もう1回行くとまた違うメンバーがいるっていう。この順繰り周るサウナのサイクルの中でいろんな出会いが生まれていたのは面白かったですね。
─まるでサーキットフェスのようなタイムテーブルが組めたのも、渋谷SAUNASの造りならではですね。
徳谷:渋谷SAUNASは、水風呂もそれぞれ深さが違うため体感温度が異なり、密室性のある空間と開かれたオープンスペースが同居して、ととのいスペースも開放感がありながら緑もあって…。このミックス感というか、多様性が表現されているのが最高ですね。
起業家が生まれて集う、ひらかれた渋谷へ
─これからの渋谷がスタートアップの共創の街として存在感を発揮していくためには、今回のイベントのようなソフトとハードが組み合わさることが重要だと想像しますが、具体的にはどのようなところが鍵になっていくと考えますか?
徳谷:いくつか要因があると思いますが、渋谷をスタートアップ共創の街にしていきたいという、強い意志を持った旗振り役がまずは何より必要だと思います。エッグフォワードは、渋谷で多彩なハードのアセットを持つ東急不動産さんとも共創して、熱を継続していく当事者の主体を担っていきたい。そこがまず前提です。
加えて重要なのが、我々エッグフォワードと東急不動産さんだけでは足りない部分で影響力を持つステークホルダーを巻き込んでいくということ。調達という面では他のベンチャーキャピタルやエンジェル投資家の皆さん。渋谷区や東京都、自治体とも組んでいけるかもしれない。起業家教育という意味では、学校や大学とできることもありそうです。そして何よりスタートアップ側、起業家ですね。すでに大きく成長したスタートアップから、これから発展するであろうシードのスタートアップ。更に、それらスタートアップと組んでみたい大企業。そういう機能別の主要プレイヤーたちを、いかに街で巻き込んでいけるかがポイントです。
共創のエコシステムを掲げている以上、誰かが得をして誰かが損するような構造にしてはいけないと思っています。関わった人がお互いに価値を提供して連鎖していくような構造、このエコシステムに対してギブしていく、ある意味で次の世代にペイフォワードしていくような。そういう価値の循環を街に残していけると、共創は一気に広がっていくのではないかと思っています。
─そのエコシステムを広めていくときに、渋谷の街にどのような場所やカルチャーが生まれると良いでしょう?
徳谷:渋谷は実際にスタートアップも集積していますし、開放感やスピード感に秀でた街としてのブランドイメージがあると思います。それがイメージにとどまるのではなく、志の高いスタートアップや投資家と出会える、経営していくための知見やノウハウが得られるといった具体的な機会の創出をしていきたいですね。
例えばシリコンバレーだと、ふらっと訪れた店先でおっちゃんと起業家と学生がビール飲みながら「それ面白いね」なんて話し込んだりしてるんですよ。そこから資金の相談に繋がるなど、偶発的な出会いが生まれやすいカルチャーが街全体にある。渋谷にはまだそういう場所は見当たらないですよね。そこに行くと次のステージに行くヒントや刺激が実際に得られるような、成功した人はいつかそこに戻ってきて後進のために価値を提供できるような、そんな拠点がつくれたら相当面白いですよね。
─社会を変える可能性を持つスタートアップを軸に、価値やスキルを交換し合う循環システムが渋谷に根付いていくと、街から生まれるビジネスやイノベーションの数は大きく変わっていきそうですね。
徳谷:時間軸の中でスタートアップや起業家が循環していく社会構造をつくるのが理想です。例えば、一人の起業家が渋谷にスタートアップを興し、世の中へ影響を与える規模に発展していき、その方がまた渋谷に戻ってきて若い起業家の教育や投資に携わるような。もちろん渋谷だけではなく、全国や海外にも広く間口を広げてウェルカムな起業文化をつくっていきたい。エッグフォワードの提唱する「スタートアップ共創の開かれたエコシステム」にはそんな想いもこめられています。本気で共感していただける方と共に手を組んでいきながら、これからの渋谷を一緒につくっていきたいですね。